第155回芥川賞&直木賞を予想!!今年は誰の手に?

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来たる7月19日、いよいよ2016年上半期の芥川賞直木賞の選考会が行われる。
御存知の通り、直木賞は大衆文芸に、芥川賞は商業性よりも芸術性や形式などに重きを置いている純文学に授与される。
気になる今年の上半期の候補作だが、今回はいったいどういった作品がノミネートされているのだろうか。早速見ていこう。

芥川賞候補作

  • 今村夏子『あひる』
  • 高橋弘希『短冊流し』
  • 崔実『ジニのパズル』
  • 村田沙耶香『コンビニ人間』
  • 山崎ナオコーラ『美しい距離』

直木賞候補作

  • 伊東潤『天下人の茶』
  • 荻原浩『海の見える理髪店』
  • 門井慶喜『家康、家を建てる』
  • 原田マハ『暗幕のゲルニカ』
  • 湊かなえ『ポイズンドーター・ホーリーマザー』
  • 米澤穂信『真実の10メートル手前』

両賞に共通している事

両賞には今回も、名実ともに「昭和生まれ最後の文豪」と形容しても差し支えないような錚々たる面々がその名を候補に連ねている。
いずれも誰が受賞してもおかしくないような顔触れだが、受賞前に前もって各作品について簡潔に触れていきたいと思う。

「芥川賞」候補作品について

今村夏子『あひる』

今村夏子は2010年に「あたらしい娘」で太宰治賞を受賞。「こちらあみ子」と改題、同作と新作中編「ピクニック」を収めた『こちらあみ子』で2011年に第24回三島由紀夫賞を受賞。以降、作品の発表はなくほぼ半引退状態となっていたというが、2016年の今年、新創刊された文芸誌「たべるのがおそい」で約2年ぶりとなる新作「あひる」を発表して活動を再開。今回ついに、同賞の候補に挙がってきた。
読了済みの読者によると『あひる』は「不気味でひたすら怖い」という。

高橋弘希『短冊流し』

高橋弘希は2014年に「指の骨」で第46回新潮新人賞を受賞。同作は第152回芥川賞の候補に、3作目「朝顔の日」も続く第153回芥川賞候補に挙げられるほど、今もっとも熱視線を浴びている新進気鋭の実力派新人作家のひとりだ。

3作目となる『短冊流し』は、サラリーマンの父親が発熱した保育園児の娘を休ませてバファリンを服用させるところからストーリーが幕を開ける短編小説だ。
読書家曰く、この『短冊流し』は三木卓の名作「震える舌」を彷彿とさせるような文体だったという。
また、高橋自身は文筆業を営む傍らでミュージシャンとしても活動。作家とミュージシャン、二つの顔を併せ持っている高橋はまるで才能が結晶化したようなクリエイティヴな精神の持ち主だ。

崔実『ジニのパズル』

在日朝鮮人について描かれている崔実の『ジニのパズル』はテーマ性こそ重いが、主人公・ジニの行動はとても純粋で読んでいて心が熱くなり、読後は肩の荷が下りたような軽快な気分になれるという。

村田沙耶香『コンビニ人間』

村田沙耶香の『コンビニ人間』はマニュアル通りの生き方を要求されて、コンビニのアルバイトしかできなくなる主人公の物語。純粋さを貫き通そうとすればするほど周囲からかけ離れその挙句、捻くれた存在として扱われ社会から淘汰されていくような「諦めていない人間」が普通の人によって自分の人生を真っ向から否定されているようなストーリー性だ。

山崎ナオコーラ『美しい距離』

そして今回の受賞候補作の中で本命と目されているのが山崎ナオコーラの『美しい距離』だ。
本作は「既婚男性必読の作品」と言われている。

「直木賞」候補作品について

芥川賞の受賞作は毎回のように買い揃えているが、直木賞の方は個人的に長年スルーしてきた。興味深いものがなく、読んでいるうちに睡魔を催すようなただひたすら長ったらしいだけの作品というのが近年の直木賞受賞作の率直な印象だが、今回の直木賞はそんな私でさえ注目しており、むしろ今回に関して言えば、人によっては芥川賞よりも直木賞の方が注目・関心度は高いかもしれない。

伊東潤『天下人の茶』

伊藤潤の「天下人の茶」は戦国時代を舞台に繰り広げられる秀吉対利休の“もう一つの戦い”を克明に描いている。
戦国を生きる人間たちの美しい覚悟と懊悩を卓越したストーリーテーリングで読者を引き込んでいく珠玉の長編時代小説だ。

荻原浩『海の見える理髪店』

荻原浩の『海の見える理髪店』は両親の離婚をきっかけに家出を決意し、海を目指す少女の冒険小説だ。交通事故で急逝した娘の代わりに若作りをして成人式へ出席しようと奮闘する父と母など、主人公のみならず周囲のハードボイルド然とした人間模様も同時進行で錯雑と描かれている。

門井慶喜『家康、家を建てる』

門井慶喜の『家康、家を建てる』はピンチをチャンスに変えていく完全無欠の天下人「徳川家康」の、前代未聞の挑戦を描いた傑作だ。『天下人の茶』と同じく、時代小説愛読者なら必読のベストセラーだ。

原田マハ『暗幕のゲルニカ』

原田マハの『暗幕のゲルニカ』は「一枚の絵が戦争を止める」というテーマをもとにスペインと大戦前のパリの交錯を描いたスリリングな長編小説だ。
国連本部のロビーに飾られていた反戦のシンボルにして2 0世紀を代表する絵画、ピカソのゲルニカ。名画のタペストリーが2003年のある日、忽然と姿を消す。誰がゲルニカを隠したのか。
『楽園のカンヴァス』でベストセラーを獲得した「原田流」が光る、芸術性を前面に打ち出した多角度的なストーリーを展開していく。

湊かなえ『ポイズンドーター・ホーリーマザー』

湊かなえの『ポイズンドーター・ホーリーマザー』は同賞候補者の常連でもあるベストセラー作家の湊かなえ自身が作家としてキャリアを積み重ね、原点回帰を計ったような傑作集だ。
物心ついた時から自分を都合の良いようにコントロールしようとする母親が原因の頭痛に悩まされてきた女優の肩書きを持つ主人公が、母親に会いたくないという理由から故郷で開催される同窓会の誘いを断るというところからこの物語は始まる。
ある日、主人公のもとに「毒親」をテーマにしたトーク番組への出演依頼が届く。
人間の闇を細部まで描いた6編が収録されているが、そのどれもが感情を揺さぶられる。

米澤穂信『真実の10メートル手前』

米澤穂信の『真実の10メートル手前』はこれまでの青春ミステリと呼ばれるジャンルにおいて様々な推理小説を手掛けてきた米沢作品の中でも史上最も完成度が高いと言われている。
米澤は前作『満願』で第27回山本周五郎賞を受賞し、第151回直木賞候補に挙がっている。
私自身も『満願』と『王のサーカス』で完全に米澤の虜にされてしまったほどだ。

真実の10メートル手前』は高校生の心中事件を取り扱っている。二人が死んだ場所の名をとって、それは恋累心中と呼ばれた。週刊深層編集部の都留は、フリージャーナリストの太刀洗と合流して取材を開始するが次第に事件について違和感を覚え始める。滑稽な悲劇、グロテスクな妄執己を直視する太刀洗の活動記録だ。日本推理作家協会賞受賞後第一作の「名を刻む死」「綱渡りの成功例」など、いずれも「奇人」と称される人間の深層心理を微細に描いている表題作を含んだ計6編が収録されている。

芥川賞作家たちの近影

芥川賞は個人的に『美しい距離』が本命、『コンビニ人間』が対抗、直木賞は『ポイズンドーター・ホーリーマザー』が本命、『真実の10メートル手前』が対抗というのが私個人の漠然とした見立てではあるが、直近の154回は本谷有希子、昨年の153回は又吉直樹が予てよりある程度受賞するだろうと確信されていたのに比べ、今回ばかりは芥川賞・直木賞の双方ともに受賞者が予測できないほどの様相を呈している。

また、芥川賞に関して言えば近年のように同時受賞という可能性も十全に有り得る。
だからこそ、数ある文学賞の中でもっとも権威のある二賞の予想は未だにおもしろい。

近年の受賞者の近況だが、又吉直樹は飛ぶ鳥も落とす勢いそのままに受賞作の『火花』が250万部を突破。同じく芥川賞作家の村上龍の『限りなく透明に近いブルー』の売上部数を抜き去り、現在も歴代記録を更新し続けている。更には6月に、エッセイ集「夜を乗り越える」を発売。『火花』のプレッシャーから解放され、着々と新作にも手を入れているようだ。

同時期に、当時20代にして又吉とともに『スクラップ・アンド・ビルド』で第153回芥川賞を受賞した羽田圭介はメディアへの進出を皮切りに、同著の売り上げ部数は22万部に迫る勢いだ。
羽田は現在『コンテクスト・オブ・ザ・デッド』『装置(仮)』『紡三部作』の三作品を同時進行で執筆しているという地獄のようなスケジュールの渦中にいる。

今回の受賞者も受賞後しばらくのあいだは方々のメディアに引っ張りだこになり多忙を極めていくことだけは間違いないだろう。

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